癌は、細胞の遺伝子異常により、自己由来の細胞でありながら、非自己となり、自律的増殖能を獲得した細胞です。
癌の増大には単に細胞の遺伝子異常の問題だけではなく、免疫寛容を促す制御機構が深く関わっていることが最近明らかになってきています。
癌に対する免疫療法として、免疫システムに認識させ、排除させるには、人為的に免疫応答をコントロールするシステムづくりが必要です。
その為に私達は、抗原提示細胞である樹状細胞に標的腫瘍の特異的抗原を発現させ体内に戻す従来のex vivo療法と異なり、
生体内の樹状細胞を利用するin vivo療法の開発を進めております。
主な研究テーマ
(1) 自然免疫の活性化を契機とした獲得免疫、記憶免疫の誘導に関する樹状細胞レベルでの分子機構の解明 (図1)
(2) トランスレーショナルリサーチ"NKT細胞療法におけるマウスモデルでの治療コンセプトの証明"(千葉大学との共同研究)
(3) 人工アジュバントベクター細胞の開発 (図2)(東京大学・山口大学との共同研究)
図1.
活性化iNKT細胞は、直接抗腫瘍活性を発揮するだけではなく、NKTリガンドを提示した樹状細胞を活性化、成熟化させます。成熟過程で抗原を取り込んだ樹状細胞は抗原特異的なT細胞を誘導できます。この自然免疫から獲得免疫誘導連鎖においてはCD40-CD40Lシグナルが最も重要です。現在、更に記憶免疫誘導への鍵となる分子機構を解明する研究を行っております。
図2.人工アジュバントベクター細胞の開発
人為的に免疫をコントロールするための方法として、活性化NKT細胞のアジュバント作用による生体内樹状細胞機能を効率的且つシステム化
するために、人工アジュバントベクター細胞の開発を行っております。この細胞は抗原を生体内樹状細胞へ運ぶためのベクターとして働くと
同時に、細胞自体が最適なアジュバント効果を引き起こす誘導体として機能します。図に示したように、細胞リガンド(α-GalCer)を
提示させたアロ細胞に腫瘍抗原由来のmRNAを遺伝子導入したアジュバントベクター細胞を作製し、マウスに免疫することで NKT細胞、
NK細胞の両者の活性化、及び樹状細胞の成熟化が誘導されます(@自然免疫誘導)。
この結果、抗腫瘍T細胞が誘導され腫瘍を拒絶できるようになります(A獲得免疫誘導)。
今後、この細胞開発を進めることで、種々の癌、および感染症の効果的治療法の確立を目指します。
[本研究テーマは、文部科学省橋渡し研究支援推進プログラムB「人工アジュバントベクター細胞の開発」に採択されております]